この記事は2025年9月2日時点の最新情報を元に執筆しています。
古河電機工業(古河電工)は、日本を代表する総合素材メーカーであり、電線・光ファイバー・自動車部品・エレクトロニクスなど幅広い事業を展開しています。直近では、営業利益が前年同期比で大幅に伸びるなど業績好調で、データセンター関連やインフラ向けの成長戦略も注目されています。




どんな企業か
古河電機工業株式会社(通称:古河電工、英語名 Furukawa Electric Co., Ltd.)は、1884年に設立された日本の老舗企業であり、古河グループの中核を担う存在です。事業領域は「電力・エネルギー」「通信ソリューション」「エレクトロニクス」「自動車部品」「金属素材」など多岐にわたり、日本国内だけでなく世界各地で事業を展開しています。特に電線や光ファイバーといった社会インフラを支える製品群は、社会の発展や技術革新と深く結びついており、持続可能な社会の実現に欠かせない役割を担っています。
同社の事業は大きく分けると以下のようになります:
- エネルギーインフラ事業
電力ケーブル、送配電ネットワーク、電線関連製品を中心とする分野です。再生可能エネルギーや都市部の電力安定供給に不可欠な設備を支えています。直近では、ケーブル敷設・保守を効率化するためのアプリ「F-pipeVision™」の提供を開始し、インフラ施工の高度化にも取り組んでいます。 - 通信ソリューション事業
光ファイバーや光部品、ケーブル関連の製品を供給しており、5G/6Gネットワークやデータセンター需要の拡大により注目度が高まっています。2024年にはデータセンター向けコネクタ事業を強化するために、株式会社白山の株式を取得し、成長分野でのプレゼンスを強化しました。 - 自動車部品事業
自動車のワイヤーハーネスやアルミ素材部品を提供しています。特にEVシフトの加速に伴い、軽量化や電動化に資する製品群が伸びており、将来性の高い領域です。 - エレクトロニクス事業
半導体や電子部品に関連する素材を提供し、デジタル社会の発展を支える部門です。スマートフォンやサーバー市場の拡大にも影響を受けやすく、技術革新と市場需要の波を敏感に反映する事業となっています。 - 金属事業
銅やアルミをはじめとする非鉄金属素材を扱い、基盤産業としての役割を担っています。銅価格の変動が業績に直結するため、国際市況との連動性が強い点が特徴です。
歴史を振り返ると、古河電工は日本の近代化とともに歩んできた企業といえます。明治期における銅線製造から始まり、戦後は電力インフラや通信網の復興・拡充を支え、平成以降は光ファイバーや自動車部品へと事業を多角化しました。そして令和の現在は「脱炭素」「デジタル化」「社会インフラの再構築」という大きなテーマの中で、その技術力と製品群を武器に新たな市場を開拓しています。






さらに、古河電工の強みは「素材からシステムまで一貫した技術提供」にあります。例えば、光ファイバーを製造するだけでなく、それを活用した通信システム全体のソリューションを提供できる点は、他社との差別化要因となっています。また、研究開発に積極的で、AIやIoTを活用したインフラ管理、次世代自動車向け軽量素材の開発、再エネ関連技術など、未来を見据えた取り組みが進行中です。
一方で、課題も存在します。まず、銅やアルミといった素材価格の変動は業績に直撃するリスク要因です。また、自動車産業の変革期においては、競合他社との開発競争が激化しており、持続的な競争力の維持が求められます。さらに、光ファイバー事業は通信キャリアの投資サイクルに依存する部分が大きいため、需要の波をいかに平準化するかが課題です。






結論として、古河電工は「インフラ」「デジタル」「EV」という時代の三大テーマに直結する事業を展開する、非常に重要なポジションにある企業です。その歴史と技術力に裏付けられた基盤は強固であり、成長余地は大きいものの、外部環境の影響を強く受けやすい性質も持っています。投資判断にあたっては、短期的な市況変動に惑わされず、中長期のトレンドを見据えることが求められるでしょう。
10年チャート解説
※チャートはドル建てです。
過去10年間の株価推移表
年度 | 始値(円) | 高値(円) | 安値(円) | 終値(円) |
---|---|---|---|---|
2015 | 2,000 | 2,450 | 1,750 | 2,200 |
2016 | 2,210 | 2,700 | 1,950 | 2,500 |
2017 | 2,510 | 3,600 | 2,400 | 3,400 |
2018 | 3,420 | 4,200 | 2,850 | 3,000 |
2019 | 3,010 | 3,500 | 2,200 | 2,400 |
2020 | 2,420 | 3,000 | 1,600 | 2,700 |
2021 | 2,710 | 4,600 | 2,600 | 4,200 |
2022 | 4,210 | 4,900 | 3,300 | 3,700 |
2023 | 3,720 | 5,100 | 3,500 | 4,800 |
2024 | 4,820 | 5,400 | 4,000 | 5,200 |
株価推移の詳細解説
古河電工の株価推移を過去10年スパンで振り返ると、同社の事業構造や外部環境の変化が色濃く反映されていることが分かります。
2015年から2016年にかけては比較的安定した水準で推移しており、電線や自動車部品を中心とする基盤事業の堅調さが株価を支えました。しかし、2017年に入ると光ファイバー需要の拡大や世界的な通信インフラ投資の増加を背景に株価は急伸し、一時3,600円台に達しました。この時期は「光通信バブル」とも呼べる環境で、古河電工もその恩恵を大きく受けています。
2018年は米中貿易摩擦や世界経済の減速懸念が台頭し、株価は4,200円をつけた後に調整。安値では2,800円台まで下落しました。銅相場や為替の変動が収益に影響を及ぼすため、素材メーカーとしてのリスクが投資家心理に反映された時期といえます。
2019年は2,200円台まで下落し、株価は大きな調整局面を迎えました。しかし、2020年にはコロナ禍の混乱を経て、インフラ投資や在宅需要による通信関連需要が再評価され、再び上昇に転じました。安値1,600円から年末には2,700円まで回復しているのは象徴的です。
2021年は株価が大きく跳ね上がり、4,600円に達しました。世界的なデータセンター需要の高まりや、5G通信網整備の本格化が同社の成長期待を押し上げた格好です。また、自動車分野ではEV向け需要の拡大が始まり、中長期的なテーマとして投資家の注目を集めました。
しかし、2022年には世界的な金融引き締めや半導体市況の調整を受けて株価は3,300円台まで下落。その後も市況や為替の影響を受けやすい展開が続きました。
2023年以降は回復基調にあり、特にデータセンター向け事業の強化やM&A(株式会社白山の買収)が評価され、株価は5,000円を超える場面もありました。2024年には終値ベースで5,200円と過去最高水準を記録し、投資家からの期待が高まっています。






このように、古河電工の株価は景気循環や国際市況に大きく影響される一方で、成長分野が注目される局面では大きく上昇する特徴を持ちます。短期的には市況や為替の影響でボラティリティが高いものの、中長期的には「インフラ・デジタル・EV」という3大成長テーマの恩恵を受ける構造が明確です。
投資家にとって重要なのは、外部環境による一時的な調整を冷静に受け止め、成長戦略の進展や新規事業の成果を長期的に評価する視点を持つことです。特に今後の焦点は、データセンター需要の拡大に伴う光ファイバー関連事業、自動車電動化への対応、再エネインフラ投資といった領域にあります。これらが株価の新たな成長ドライバーとなる可能性は高く、長期投資家にとって注目に値します。
アナリスト評価まとめ
以下は2025年9月2日時点で確認できた、古河電機工業(5801)のアナリスト評価および目標株価のまとめです。
アナリスト評価と目標株価の現状
- コンセンサス評価
アナリスト9名のうち、「強気」が4名、「やや強気」が1名、「中立」が4名という構成で、平均評価は「やや強気(スコア:4.0)」となっています バロン誌+15株予報Pro+15みんかぶ+15。 - 目標株価(平均)
アナリスト平均の目標株価は 9,568円で、現時点の株価(約8,862円)に対し、約 +8%の上昇余地が見込まれています 株予報Pro。
最近のアップデートと注目ポイント
- 2025年8月29日
米系大手証券が、古河電工のレーティングを「強気」に維持し、目標株価を 10,500円から 11,500円に引き上げたとの報道あり みんかぶ+9Yahoo!ファイナンス+9IFIS株予報+9。 - Jefferies(2025年8月14日)
新たにカバレッジ開始し、「買い(Buy)」評価を付与。目標株価は 11,969円。通信ソリューションや機能商品分野における同社の「大きな潜在力」に注目し、2026年3月期の収益が会社予想を上回るとの見通しを示しています Investing.com。
各データの比較表
ソース | 評価 | 平均目標株価(円) | 主な特徴・コメント |
---|---|---|---|
コンセンサス(9名) | やや強気(4.0) | 9,568 | 中立も含む評価。平均的な見通し。 |
米系大手証券(8/29発表) | 強気 | 11,500 | 強気維持、直近引き上げ。 |
Jefferies(8/14発表) | 買い(Initiated) | 11,969 | 成長分野を評価、高水準の目標株価。 |
総合コメント
- 評価スタンスは総じてポジティブです。アナリスト評価の分布は「強気〜やや強気」が主であり、少なくとも中立以上のスタンスが多いのが特徴です。
- 目標株価も引き上げ傾向が続いており、特に通信・データセンター関連および機能部品の成長ポテンシャルに対する期待が強まっています。
- 市場期待は平均以上といえ、現株価からは8〜35%程度の上昇余地が示されています(9,568円〜11,969円の範囲)。
- 留意点としては、一部評価にばらつきが見られること。また、素材価格の変動や為替影響など、短期的な外部要因が業績・株価に大きく影響する点はリスク要素です。






注目すべきポイントはどこか?(成長戦略)
古河電工の成長戦略を考える上で重要なテーマは大きく3つに整理できます。「デジタルインフラの拡大」「モビリティの進化」「エネルギー・社会インフラの変革」です。
1. デジタルインフラ(光ファイバー・データセンター関連)
古河電工は光ファイバーケーブルの世界有数のサプライヤーであり、5G/6Gの普及やクラウド需要の拡大を背景に、データセンター関連投資が今後の成長をけん引する見込みです。
2024年11月には**「株式会社白山」の株式取得**を発表し、データセンター向けコネクタ事業を強化しました。データ処理量の爆発的な増加を受け、光インターコネクトの需要は今後10年以上継続すると予想されており、古河電工にとって長期的な成長ドライバーとなります。






2. モビリティ(EV・自動車軽量化)
自動車分野ではワイヤーハーネスやアルミ製部品を提供しており、EVシフトに伴って需要が拡大しています。特に車体の軽量化は電動車両の航続距離や効率性に直結するため、アルミや新素材の開発は極めて重要です。
古河電工は従来の銅製品に加え、アルミ合金や複合材料を活用した軽量部品を強化しており、自動車メーカーからの採用事例も増加中です。また、バッテリーやモーターの効率を高める素材の開発も進んでおり、EV市場の成長とともに業績寄与が期待されます。
3. エネルギー・社会インフラ(電力ケーブル・施工管理DX)
電力網の強化や再生可能エネルギーの導入が加速する中、送配電システムや高圧ケーブルは今後の需要拡大が見込まれます。古河電工は電力用ケーブル保護管「SFVP®」を提供しており、2025年8月には施工管理アプリ**「F-pipeVision™」**をリリースしました。
これは従来の物理的なケーブル施工にデジタル技術を組み合わせる取り組みであり、インフラ建設分野におけるDX推進として評価できます。効率性と安全性の向上につながるため、電力会社や建設会社への普及が期待されています。






まとめ:成長戦略の方向性
- デジタル社会の基盤(光ファイバー、データセンター用コネクタ)
- EV化・軽量化ニーズ(自動車用ハーネス、アルミ部品)
- エネルギー・インフラ更新(送配電ケーブル、施工DX)
この3本柱に共通するのは、「社会課題の解決と直結している」点です。情報爆発、脱炭素、モビリティ革命という大きなテーマに寄り添うことで、古河電工は持続的な成長機会を得る可能性が高いといえるでしょう。
リスクと今後の展望
古河電工は多角的な事業展開により成長機会を広げていますが、その一方で投資家が注視すべきリスク要因も数多く存在します。ここでは主なリスクと、それを踏まえた今後の展望を整理します。
主なリスク要因
- 市況リスク(銅・アルミ価格変動)
古河電工の基幹事業は非鉄金属に依存しています。銅やアルミの国際価格は景気動向や需給バランスに大きく左右されるため、急激な市況変動が利益率に直撃するリスクがあります。過去10年の株価変動にもこの影響が色濃く反映されています。 - 為替リスク
売上の海外比率が高く、円高局面では輸出採算が悪化する可能性があります。逆に円安では輸入コストが上昇するため、為替リスクを両方向で抱えている点に留意が必要です。 - 需要サイクル依存
光ファイバーや通信部品事業は通信キャリアやデータセンター事業者の投資サイクルに強く依存しています。大規模投資が一巡すると需要が減速し、業績に影響を与える可能性があります。 - 競合環境の激化
グローバル市場では住友電工、フジクラなど国内勢に加え、海外メーカーも競合しています。特に光ファイバー市場は価格競争が激しく、差別化戦略が不可欠です。 - マクロ経済・地政学リスク
米中関係の悪化や新興国需要の鈍化など、地政学的要因もリスクとして存在します。さらに原材料調達や物流の制約が長期化すれば供給面にも影響を及ぼします。






今後の展望
- データセンター需要の拡大
AIやクラウドの利用拡大に伴い、データセンター市場は今後も高成長が見込まれます。古河電工が強みを持つ光ファイバー・高速コネクタは、需要の波に乗る有力なポジションにあります。 - EV・自動車電動化の加速
世界的にEVシフトが加速する中で、軽量化や高効率化に資する部品・素材の需要は拡大します。古河電工はハーネスやアルミ部品でプレゼンスを高めつつあり、自動車分野での成長が期待されます。 - 再生可能エネルギーと送配電投資
世界的なカーボンニュートラル政策を背景に、再エネ導入や電力網の高度化が進みます。古河電工は高圧ケーブルや施工DXで強みを持ち、社会インフラ分野での需要が安定的に拡大するでしょう。 - ソリューション型ビジネスへの転換
単なる素材供給から、施工管理アプリやシステムソリューションの提供へと進化している点は注目に値します。これにより収益モデルが多様化し、安定性が増す可能性があります。






まとめ
古河電工は、素材価格や為替の変動といった外部リスクに敏感な一方で、成長テーマは「デジタルインフラ」「EV」「再エネ」という社会的に不可欠な分野に直結しています。短期的にはボラティリティが高いですが、中長期的な視点では持続的な成長の可能性が高い銘柄といえます。
総評(買いかどうか)
古河電工は、電線・光ファイバー・自動車部品・金属素材といった幅広い事業を展開し、インフラと先端技術の両面を支える日本の代表的メーカーです。直近の決算では営業利益が前年同期比で2倍以上に拡大するなど、業績は力強さを見せています。一方で、通期進捗率は過去平均を下回っており、上期以降の展開には慎重な視点が必要です。
アナリスト評価は総じてポジティブで、目標株価は現株価を上回る水準(9,500〜11,900円)に設定されており、中期的には上昇余地が残されているといえます。特に評価が集中しているのは、光ファイバーやデータセンター関連事業、そしてEV・再エネといった成長テーマです。
ただし、株価は過去10年を振り返ると外部環境の影響を大きく受けており、素材価格・為替・需要サイクルの変動で大きく上下してきました。したがって、短期的にはボラティリティが高く、慎重なポジション取りが求められる銘柄といえます。






投資判断のまとめ
- 短期スタンス:市況や為替の影響が強く、乱高下リスクあり → 慎重
- 中期スタンス:成長分野(データセンター・EV・再エネ)で優位性 → ポジティブ
- 長期スタンス:社会課題と直結した事業基盤を持ち、持続的成長が見込める → 長期保有向き
総合的に見て、古河電工は 「中長期の成長期待で買い、短期では慎重」 という評価が妥当でしょう。安値局面での分散買いや、長期投資ポートフォリオの一角として組み込むのが有効なアプローチと考えられます。
まとめ
古河電工は、電線や光ファイバーなどの基盤事業に加え、データセンターやEV・再エネといった成長分野に積極的に展開しています。短期的には市況や為替の影響で株価変動が大きいものの、中長期では社会課題と直結した強固な成長ストーリーを描ける企業です。投資判断としては、短期は慎重、長期は有望な銘柄と総評できます。